●シンポジウムの目的
人間と機械の共生が進む時代にあって、私たちは人工物との距離感をどのように意識すればいいのだろうか。機械に対する感覚や眼差しをどのように定めればいいのだろうか。ひとつの拠り所が、機械に生命的なものを読み込む「テクノアニミズム」ではないか、というのがこのシンポジウムの出発点である。
古来、日本社会には針供養や付喪神(つくもがみ)など、道具に霊的な性質を感じ取る感覚が脈々と流れている。そのような感覚が、現代のロボットやAIについても通用する、あるいは有益なのか。また、そのような感覚はほかの国や文化圏ではどのような様相を呈しているのだろうか。そして「テクノアニミズム」とは、いかにも安直な発想でありネーミングなのではないか。疑問はつきない。
このシンポジウムの目的は、テクノアニミズムを礼賛することでも、否定して葬り去ることでもない。従来の、人間と人工物を峻別する価値観が通用しない時代にあって、テクノアニミズム「的なる発想」を、どのように鍛え上げ、修正していけば使えるものになるのか、その道筋を見極めることが目標である。
演者は、人類学、哲学、ロボット研究者の多岐に渡る。多方面からの活発な議論を期待する。(佐倉統)
●プログラム
14:00-14:20 佐倉統(東京大学/理研AIP)「テクノアニミズム再考──背景と狙い」
Ⅰ.テクノアニミズムを批判的に俯瞰する
14:20-14:40 呉羽真(山口大学)「日本人とロボット――テクノアニミズム論の疑わしさと危うさ」
講演者は、論文「日本人とロボット――テクノアニミズム論への批判」(Contemporary and Applied Philosophy 13: 62-82, 2021)において、哲学・歴史学・宗教学・人類学・HRI等の知見に基づき、「テクノアニミズム論は、単に根拠を欠くのみならず、社会にとって望ましくない結果をもたらしかねない」という結論を下した。本講演では、同論文の背景と内容を紹介し、また、ロボットに関する議論において証拠を重視する姿勢の必要性を説く。
14:40-15:00 久保明教(一橋大学)「テクノアニミズムと人類学的臨界」
日本国内で生まれ育った人類学者にとって、テクノアニミズムとは、非近代的な社会を生きる異文化の「彼ら」についての近代的な社会を生きる「私たち」の理解を相対化し拡張していく、という人類学の基本的なスタンスを機能不全に陥れる極めて厄介な概念である。本発表では、現代人類学におけるアニミズム論の展開とロボットやAIに関する発表者自身の事例分析を突き合わせながら、テクノアニミズム概念を起点にして、考察の主体が同時に「私たち」でも「彼ら」でもあるような人類学的考察の可能性を探求する。
Ⅱ.テクノアニミズムをロボット工学から考える
15:00-15:20 石黒浩(大阪大学)「人間とロボットの境界」 ※諸般の事情により石黒教授の講演は動画再生となりました。御了承ください。
人間とロボットの本質的な違いは何か。ロボットは人間にとってそもそもどのような存在なのか。そうした観点からテクノアニミズムについて議論する。
15:20-15:40 岡田美智男(豊橋技術科学大学)「ロボットとの相互行為の組織化における「リソース」として」
静止したままの〈ゴミ箱ロボット〉は、タダのゴミ箱であり、手伝ってあげようとの感覚は生まれない。ところがひとたびヨタヨタと動き始めた途端に、その背後にある思いを読もうとしてしまう。本発表では、いくつかの〈弱いロボット〉たちとの相互行為の組織化における「リソース」という観点から、私たちの帰属傾向について検討する。
Ⅲ.討論 15:50-16:30
コメント:神里達博(千葉大学)
Public events of RIKEN Center for Advanced Intelligence Project (AIP)
Join community